奥多摩町・小河内地区を中心に、住んだり働いたりしている素敵な方々を紹介するコーナーです。今回は、奥多摩駅2階にあるカフェ”Gotta Coffee”の店主、羽角嘉晃(はすみ よしあき)さんを取材しました。

 

コーヒーが美味しい。

カフェで飲むコーヒーが美味しいだなんて、当たり前だと思うかもしれない。

 

いや、ほんとうに美味しいのだ。

口に含むと、ほろ苦さとフルーティーな酸味が、ふわっと拡がる。そして飲み下した後の、口腔に滞留する甘さの余韻。無論、砂糖もミルクも入れていない。

 

「あれっ、美味しい」

今まで感じたことのない不思議な感覚に「美味しいです」と素直に伝えたら、味の秘訣をこっそり教えてくれた。そんな素敵な店主にせまる、今回のインタビュー。

 

平成最後の年となった2019年4月、奥多摩駅二階にある”Port Okutama”の一角で、そのお店はスタートした。

名前は、”Gotta Coffee”(ガタ コーヒー)。

「 “We gotta get some nice Coffee!”(コーヒーを飲みに行こうよ!)くらいの軽い気持ちで来てくれたら、という思いが込められています。”山形”(やまがた)だから、”がた”コーヒーって説明しちゃうこともあるんですけどね」

 

店主の羽角嘉晃(はすみ よしあき)さんは山形出身。“Gotta Coffee”と書かれたTシャツにプリントされているのは、山形県で有名な月山と蔵王山。”Coffee”の文字にはコーヒー豆がさりげなく描かれてる。一番下には”OKUTAMA”の文字。

奥さまの保子(やすこ)さんとご家族で奥多摩に引っ越してきたのは、お店がオープンするわずか2週間前のことだった。

「定年退職を迎えたらコーヒーショップをやろうね、って保子さんと話してはいたのですが、まさかこんなにも早く始めることになるとは(笑)」

 

嘉晃さんは現在47歳。Gotta Coffeeの開店は、公務員を早期退職しての挑戦だった。

「Port Okutamaの舩越さんから、『コーヒーショップをやらないか』ってお誘いいただきました。奥多摩には何度も遊びにきてはいたのですが、住んだことも無く、不安はありましたね」

新しい場所での新しい仕事。接客経験もないのにカフェ営業が果たして務まるのだろうか、思い悩んだそうだ。

「家族ともよく話し合いました。最後は決断しましたが、思い返してみると、保子さんに背中を押されたことが踏み出すきっかけになったのかな。挑戦する機会をいただいたんだと思いました」

新しい場所に住むことと、新しい仕事を始めることを、ともに決断した2人。

 

そんな2人が紡ぎ出すコーヒーは格別に美味しい。

 

「奥多摩は水が本当にいいですよね。飲んだときの舌触りがなめらかで、雑味がないなぁって」

名だたる酒蔵が名水地にあるように、コーヒーに使われる水もまた、味・香り・舌触りなどを大きく左右する存在だ。

奥多摩町は都下に流れる多摩川の源流域にあたる。町内で使用される水道には、奥多摩で取水された新鮮な水が用いられている。下流に流れる河川水源よりも、はるかに美味しい。

「他の場所で淹れたコーヒーとは、味が全然違いますね」

Gotta Coffeeでは、そんな奥多摩の水を浄水器に通すことで、カルキや塩素などの不純物を取り除きコーヒーに最適な水を作り出している。羽角さんが徹底して水にこだわるのは、水の違いがそれほどまでにコーヒーの味や風味に影響を与えることを熟知しているからだ。

 

水と同じくらいに、いや、それ以上にこだわっているのがコーヒー豆。Gotta Coffeeでは、”東京アドベンチャーラインCoffee”(JR東日本商品化許諾済)と”KUMOTORI Coffee”の2種類を提供している。

「東京アドベンチャーラインCoffeeは深煎りで、コーヒーの質感をしっかり残しつつも、甘みをほんのりと感じる飲み心地が特徴です。KUMOTORI Coffeeは少しライトな質感に調整してあります。酸味を押しだして明るめに、華やかな味わいが特徴です」

それぞれ、”東京アドベンチャーライン”(JR青梅線の通称)、奥多摩の名峰”雲取山”から名前がつけられている。どちらも奥多摩の水に合うように、嘉晃さんが厳選したスペシャリティーコーヒー豆を3種類以上組み合わせて開発した、オリジナルブレンドだ。

 

飲んだ際に口に拡がる酸味、そして甘みの余韻。コーヒー独特の風味は、生豆を炒る”焙煎”という作業によって生み出されている。焙煎如何によって、香り・苦味・酸味・甘味といったコーヒー独特の風味が決定される。最大限に良さを引き出せるかは、焙煎士の腕に委ねられている。

「ほぼ毎日、焙煎していますよ。最高に良い状態で提供したいですから」

何度も通っていると、嘉晃さんの焙煎風景に遭遇することがある。コーヒーロースターが稼働している”当たり”のタイミングだ。店の入り口を開けた瞬間に、心地よい匂いが、ふわっと香る。

 

「焙煎は難しいですね。豆の量はもちろん、気温や湿度が変わると、同じ条件で焙煎しても仕上がりが大きく異なります。1日に何回か焙煎するのですが、何回目の焙煎かによって窯の温度も変わってきますから、微調整が必須です。全く同じ味を再現するのは難しいですよね」

焙煎のポイントは、豆と対話しながら、じっくり焦らずにやること。それが嘉晃さんの教えてくれた極意だ。

「コーヒーは豆の状態はもちろん、淹れ方、飲む人のコンディションなど、様々な要因で味や香りが決まります。一期一会の出会いだからこそ、その一杯を楽しんでいただけたら幸いです」

 

奥多摩の水、選び抜かれた豆、焙煎への熱意。教えてもらったGotta Coffee ”美味の秘訣”だ。知らなくたって美味しいけれど、知ったらもっと美味しく感じるはず。

嘉晃さんが真心込めて淹れた一杯は、ほんとうに、ほんとうに、おいしいのだ。

 

インタビュイー:羽角 嘉晃さん
取材協力:羽角 保子さん
インタビュアー:谷木 諒

取材日時:2019/06/04

メニュー

Sサイズ ¥300 Rサイズ ¥400
・東京アドベンチャーラインCoffee
・KUMOTORI Coffee
・カフェインレス
・本日のコーヒー
・水出しアイスコーヒー

・カフェオーレ ¥450
・エスプレッソ・ソロ ¥250
・エスプレッソ・ダブル ¥350
・アメリカーノ ¥350
・シェケラート ¥300
・カフェ・ラテ ¥450
・カプチーノ ¥400
・アフォガード ¥400

※カフェラテ/カプチーノは豆乳へ変更できます。

アクセス

住所:〒198-0212 東京都西多摩郡奥多摩町氷川210
電話:0428-83-8160

※奥多摩駅から徒歩0分。奥多摩駅の改札を出て、駅舎の2階”Port Okutama”内の一角にあります。

 

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